2008年5月29日木曜日

書評:『うつ病をなおす』

うつ病は一般に思われているよりもありふれた病気なのだけど、侮ってはいけない。

4061497529うつ病をなおす (講談社現代新書)
野村 総一郎
講談社 2004-11-19

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うつ病において何が一番恐いかというと、その人の意識を“絶望”へと導く強引さである。しかし、「うつ病=絶望」ではない。
P.4
絶望は病気ゆえに感じる「症状」であって、症状である以上、医学的な治療が解決の切り札になる。
先日、練炭自殺してしまった川田亜子さんは、まさにここへの対処が遅れたケースとなる。具体的なところは本人にしか分からないのだろうけど、彼女がどうしようもない絶望(感)に襲われていたことは否定できないだろう。彼女に最も必要だったのは、強靭な精神力ではなく、しばらくの休養と医学的治療以外の何物でもない。

ただし、そのことを認識できている人間が彼女のまわりにどれだけいただろうか?そして、同様のことが、私たちのまわりについても言える。あなたのまわりに、うつ病についてある程度の知識を持っている人がいるだろうか?

本書はまさに一般の人がうつ病について知るためのうってつけの一冊である。

うつ病と一言にいっても、いろんなパターンがあるし、それぞれに治療法も異なってくる。それに、うつ病になりやすい性格の人というのもある。そういうところを本書ではひと通り網羅してくれている。ただし、気をつけてもらいたいのは、本書を読んだからといって、うつ病についてめちゃくちゃ詳しくなるわけではない。

心理学部や医学部なんかでありがちなのが、いろんな病気や症例を学んでいく際で、

「これって、まさに自分自身のことを言ってる!だから、自分は○○という病気に違いない!!」

と信じ込んでしまうケース。Medical student SyndromeとかMedical Student Diseaseとか呼ばれるもので、心理学部や医学部で勉強している学生に多い。基本的にうつ病と診断されるには、DSM-IVなどの診断マニュアルで「うつ」だと認められなければならない。まず、うつ状態が少なくとも2週間続いていなければ、「うつ病」と診断できない(もちろん、例外はあるけれど…)。

そして、個人的に本書が良書だと思うのは、「認知療法(認知行動療法)」についていくらか語られているからである。

フロイトやユングをはじめとする精神分析が日本ではやたらとマスコミで取り上げられていた時代があったけれど、精神分析は余程の熟練師でなければ、患者に逆効果を与えてしまう可能性が高い。その点、認知療法は精神分析ほどリスクは高くないし、患者のQOLを高める部分が強い。認知療法の手引きみたいなものが、ちょろっと紹介されているけれど、自分一人ではなかなか難しいだろうね。やっぱり精神科医か臨床心理士のもとで導いてもらうのがベストかな。

自分はうつ病にはならないとは誰も断言できないだろうし、家族の誰かがうつ病になる確率も現代はすこぶる高い。そんな意味で、本書はうつ病を知るための(いまの時点で)最良の一冊だと思う。

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